ダイヤモンドの品質を決める4C(カラー・カラット・クラリティ・カット)のうち、カラー、カラット、クラリティの3つは採掘した段階で原石がすでに持ち合わせている品質ですが、カットは違います。
ダイヤモンドを「鉱物」から「宝石」に変えるのは、熟練したカット職人(カッター)の技術に他なりません。腕の良いカッターは原石の品質を見極め、カラーやクラリティのグレードにも配慮しながら最適なカッティングを施していきます。
では、ダイヤモンドのカットにはどのような種類があるのでしょうか?今回はダイヤモンドのカットに着目し、そのグレードについてお話しします。
目次
ダイヤモンドのカットグレードは5段階+α
カットはダイヤモンドの輝きを決定づける重要なポイントです。唯一人の手が加わる工程だからこそ、評価は厳しく、世界基準として以下の5段階が定められています(評価が高い順)。
1.エクセレント(Excellent=EX)
2.ベリーグッド(Very Good=VG)
3.グッド(Good=G)
4.フェア(Fair=F)
5.プア(Poor=P)
また、ダイヤモンドは「ラウンドブリリアント・カット」を施した場合のみ、そのカットに対する評価がつきます。
全体を総合的に評価する「プロポーション(Proportion)」、研磨状態を見る「ポリッシュ(Polish)」、対象性を判断する「シンメトリー(Symmetry)」、これら3つが全てEXの基準を満たしたとき、そのカットは「トリプルエクセレント(3Excellent=3EX)」と称されるのです。
なお、カットと研磨の終わった裸石をルースと呼びますが、ダイヤモンドのルースを特殊なスコープで見ると、上から見たときには8本の矢が、下から見たときには8個のハートが浮かび上がるケースがあります。この現象は「ハート&キューピッド(H&C)」と呼ばれ、日本では3EXと並ぶ高品質カットの基準と考えられています。
ダイヤモンドのカットの種類は?
ダイヤモンドといえば、ラウンドブリリアント・カットが代表的です。いわずと知れた、ダイヤモンドの輝き(brilliant)を最大限に引き出すこのカットは、1919年、宝石職人のマルセル・トルコフスキーによって発表されました。
数学者でもあったマルセルは、ダイヤモンドの反射や屈折率を計算し、これらの光学的特性を数学的見地から解析したのです。そうした研究と試行錯誤の末に生み出されたラウンドブリリアント・カットは世界中で評価され、今やダイヤモンドのスタンダードとなりました。
もちろん、ダイヤモンドの形状はラウンドブリリアントだけではありません。ラウンド以外のカットは、総じて「ファンシーカット(ファンシーシェイプ)」と呼ばれています。
それでは、ファンシーカットの代表的なものをご紹介しましょう。
ペアシェイプ
西洋梨の形。涙の滴にも似ていることから「ティアドロップ」とも呼ばれます。大粒の石に適したカットです。
エメラルド
四方の角に面を持つ長方形。傷や内包物が多い原石には向きませんが、透明度を強調できるカットです。
プリンセス
正方形。テーブル面(上部の平らな面)が広く強い輝きが出る一方、エッジが欠けやすいというデメリットもあります。
マーキース(マーキス)
舟形。原石が細長い場合に用いられ、実際のカラット数よりも大きく見せられるという特徴があります。
オーバル
楕円形。ダイヤモンド以外の宝石にも多く用いられる定番カットで、輪郭のバランスが印象を左右するカットです。
ハートシェイプ
ハート形。欧米では人気ですが、日本では希少性のあるカットです。
ダイヤモンドのカットと価値の関係
ダイヤモンドのカットは、その原石に合わせて選別されるため非常に多くの種類があります。中でも、ラウンドブリリアント・カットはダイヤモンドの輝きを重視することから、原石のロス率が高く、50%以上研磨しなければ完成しないといわれています。
さらに上部と下部の平面部分がそれぞれ正八角形になっていないと成立しないため、カッターの正確な技術も必要です。その点で、ラウンドブリリアント・カットには「理想的な輝きを生み出しロス率に見合う価値がある」ことは確かでしょう。
しかし、価値の決め手がカットなのかといえば、それは絶対条件ではありません。美しさの観点はさまざまで、カラーや内包物によっては違う形状を選択した方が美しく仕上がる場合もあるためです。
それでもラウンドブリリアント・カットが特別視されるのは、はじめにお話しした「4C」の1つである「カット」の判定基準となっているからでしょう。鑑定書を発行できる唯一のカッティングなのです。したがって、鑑定書の付いたダイヤモンドを購入するためには、ラウンドブリリアント・カットを選ぶ必要があります。
おわりに
ダイヤモンドの品質は、「4C」によって総合的に評価されます。カットだけにこだわるのではなく、組み合わせを見極めて希少性の高いものに着目すると良いでしょう。自分が納得できるものを購入してくださいね。