美しい輝きと高い希少性から、貴金属として重宝されてきたプラチナ。
しかしここ最近では、プラチナの価値は下落傾向にあるという見方も目立ち、プラチナより希少性が低いはずの金の価格を下回っているのが現状です。
こうした情報に触れると「プラチナは今後価値がなくなってしまうのでは?」と不安に感じてしまいますよね。
しかしこのような懸念の一方で、「プラチナの価値はなくならない」「プラチナ価格は今後上昇する」という見解を述べる専門家もいます。
あらゆる情報が錯綜する中、どんな情報を信じれば良いか悩む方も多いはず。
そこで今回は、プラチナの価格に大きな影響を及ぼす5つの要因と、今後のプラチナ価格の動向の予想について紹介します。
プラチナの価値がなくなる可能性や、プラチナの価格と金の価格が逆転した理由についても解説しますので、プラチナの価格下落について不安に思っている方も、ぜひ最後までご覧ください。
ブランド買取販売店「ギャラリーレア」でLA部部長として勤務。業界屈指の激戦区である大阪エリアにおいて10年以上のブランド買取経験を持つ。
日本流通自主管理協会(AACD)の認定査定士として、ブランドに対する確かな知識とお客様に寄り添ったサービスを武器に第一線で活躍している。
目次
プラチナの価値がなくなる可能性はある?
結論から言うと、プラチナの価値は今すぐになくなると言うことは無いでしょう。
なぜなら、プラチナは「実物資産」であるため、物そのものに価値があります。
そのため、需要と供給のバランスに左右され、価格が上下することはあっても、企業や国家の倒産や破綻によって価値が失われてしまう株や債権とは違い、完全に価値がなくなるとは考えられません。
金が年間約3,000トン採掘されるのに対し、プラチナは200トン弱で金の1/15の産出量しかなく、極めて希少性の高い金属です。
このような希少性に加え、プラチナは優れた触媒作用や化学的に安定しているという特徴から、自動車産業を始めとする工業用需要が高い素材です。
こうした需要と供給のバランスの観点からも、プラチナの価値が完全になくなってしまうことはないでしょう。
プラチナと金の価値が逆転した理由とは?
前述の通り、プラチナの希少性は金よりも遙かに高いのですが、2024年現在、金1gの公表相場が一万円を超えているのに対し、プラチナ1gは4千円台後半となっていて、プラチナの価格は金の価格を大きく下回っています。
近年、金の価格が高騰してプラチナの価格が下落傾向にある理由は、それぞれの用途が大きく関係しています。
主にプラチナは、ディーゼル車の触媒として利用されてきました。ディーゼル車とは、ガソリンよりも安い軽油で走る自動車のことです。
しかし、2015年ドイツのフォルクスワーゲンによる排ガス不正問題を皮切りに、ディーゼル車への不信感が高まっていきました。
それに加え、世界的な脱炭素機運の動きにより、ディーゼル車の需要がさらに減り、結果的にプラチナの需要と価格が下がりました。
プラチナは、こうした自動車産業の影響を受けやすく、ディーゼル車の需要が低下すると価値が下落するという特徴があります。
一方、金は工業用の需要はわずか7%で、主に宝飾品や資産としての需要が中心です。
そのため、金は「安全資産」として捉えられ、経済危機や世界情勢が悪化したときにこそ需要が高まるのです。
近年では、新型コロナウイルスによるパンデミックや、ロシアによるウクライナ侵攻が金の価格高騰に繋がりました。
このように、プラチナの価値が下落する要因と、金の価値が上昇する要因が重なり、結果的に金の価値がプラチナを上回ることとなったのです。
プラチナの価値に影響を与える5つの要因を解説!
プラチナの価値に影響を与える要因として、金融緩和政策、消費国の景気、南アフリカ情勢、自動車産業、水素化社会の5つが挙げられます。
それぞれ要因をチェックしておけば、プラチナ価値の動向について、ある程度ざっくりとした予測ができるようになりますので、必ず確認しておきましょう。
プラチナの価値に影響する要因1：金融緩和政策
金融緩和政策により経済活動が活発になると、プラチナの価格が上昇する傾向にあります。
2020年頃、新型コロナウイルス感染拡大による経済の低迷により、プラチナの価格も大きく下落しました。
しかし、その後に経済の立て直しを狙った金融緩和政策が各国で実施されました。
その結果、プラチナを触媒に利用した自動車の生産台数も徐々に回復し、プラチナの価格も再び上昇してきました。
プラチナの価値に影響する要因2：消費国の景気
プラチナの主な消費国は、北米、ヨーロッパ、日本、中国です。
これら消費国の景気動向が、プラチナの価格を大きく左右します。
景気が好調なときには消費が活発化し、プラチナの需要が増えて価格が上昇します。
反対に景気が悪化すると、需要が低迷して価格が下がりやすくなります。
したがって、主要消費国のGDPや金融緩和政策の動向を注視することが重要です。
これにより、プラチナ市場の動向や価格変動を予測し、投資判断を行うことが可能となります。
プラチナの価値に影響する要因3：南アフリカ情勢
南アフリカは世界最大のプラチナ産出国で、全世界シェアの約70%を占めています。
南アフリカには、12万平方キロメートルほどの「ブッシュフェルト複合岩体」という岩盤地帯があり、この鉱脈から多くのプラチナが産出されるのです。
そんな南アフリカの情勢は、プラチナの価格変動に大きな影響を与えます。
過去には、南アフリカの鉱山会社の電力不足による生産停止や、南アフリカの鉱山労働者たちによるストライキが影響し、プラチナの価格が急騰したこともあります。
また、南アフリカの通貨「ランド」の価値が下落すると、輸出量が増加し市場での供給が増え、結果的にプラチナの価格が下落することも考えられます。
プラチナの価値に影響する要因4：自動車産業
プラチナの需要の約70%は工業需要であり、うち40％を自動車産業が占めるほど、自動車産業とプラチナは密接な関係にあります。
先述したように、プラチナは主にディーゼル車の排気ガスを浄化するための触媒として利用されてきました。
現在は、脱ディーゼル車の流れが進んでいるため、プラチナの需要が低下しています。
しかし近年では、ガソリン車の浄化触媒をパラジウムからプラチナへと置き換える動きが見られるようになりました。
今後のパラジウムの価格と供給状況なども関係してきますが、この動向が続くようならプラチナの需要が今後さらに増える可能性もあるでしょう。
プラチナの価値に影響する要因5：水素社会化
近年、水素を主な燃料エネルギーとして用いて、CO2や排気ガスを排出しない環境に優しい社会を実現する流れが進んでいます。
この水素社会化実現に向けた流れが、プラチナの価値に大きく影響すると言われています。
その理由は、水素エネルギーの生成に必要な水素生成装置にあります。
水素エネルギーは、水素と酸素の化学反応により電気と水を発生させる仕組みとなっています。
通常、この化学反応を促すには、高温と高圧が必要ですが、プラチナがあれば、低温で化学反応を促すことができるのです。
そのため、水素社会化の流れにおいてプラチナは非常に重要な役割を担っています。
ただし、今後プラチナよりも水素エネルギー生成に適した触媒が発見された場合、プラチナの需要が減少する可能性も否定できません。
プラチナの価値はこれからどうなる?今後の相場予想は?
プラチナの価格動向は、新型コロナウイルス感染拡大による影響が、未だに尾を引いており先行きは不透明なままです。
しかし、これまで解説してきたプラチナの価値に影響を与える要因の動向を見ていくと、今後プラチナの価格は少しずつ上昇していくと予想されます。
その理由の一つとして挙げられるのが、アフターコロナに向けての経済政策です。
新型コロナウイルスによる経済低迷から脱却しようと、各国で経済の正常化を図る動きが活発化しています。
こうした経済政策の影響を受けて、徐々に市場の消費が活発化すれば、自然とプラチナの価格も上昇していくでしょう。
また、自動車産業でも今後プラチナの需要が増えてくることが予想されます。
ディーゼル車に変わる技術として期待されている、燃料電池自動車(FCV)が関係しています。
燃料電池自動車には、ディーゼル車の約10倍のプラチナが必要です。
つまり、脱ディーゼル車の流れによって燃料電池自動車の生産が推し進められれば、プラチナの需要が更に増え、価値も上昇すると予想されます。
ただし、これまで述べたものは、あくまでも予想のうちの一つであり、正確な答えではありません。
今後の主な消費国の経済情勢の変化や、プラチナに替わる新たな媒体の発見などがあれば、プラチナの価値が下落する可能性もないとは言い切れません。
引き続き、プラチナの価値に影響を及ぼす要因を注視していくことが重要です。
プラチナの価値がなくなる可能性についてのまとめ
まとめ
- プラチナはそのものに価値があるため、完全に価値がなくなることはない。
- プラチナの価格は金融緩和政策や主要消費国の景気、南アフリカ情勢、自動車産業、水素社会化に大きく影響される。
今回は、プラチナの価格に影響を与える要因と、今後のプラチナの価格予想についてご紹介しました。
プラチナの価格の今後については不透明ではありますが、実物資産であることから価値が完全になくなることは考えられません。
ただし、プラチナの価格は世界情勢や自動車産業に大きく左右されるものなので、今後もそれらの動向を注視していく必要があるでしょう。
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