世界経済の不安定さにより投資家から注目を集め、買取相場価格の最高値を更新し続けている「金」。
2012年には1gあたり4,450円だった平均買取価格が、2022年には8,300円を記録しており、この10年で2倍近くまで価格が高騰しています。
金は今まさに売り時といわれており、現在保有している金を売却して利益を得ようと考える方も多いことでしょう。
ただし、金を売却する際に注意したいのが税金です。
金の売却で発生した所得は課税対象となるため、金額によっては確定申告をして税金を納めなくてはなりません。
適切な金額を申告しなければ脱税とみなされ、税務署からペナルティが来る可能性もあるので十分な注意が必要です。
そこで今回は、金の売却にかかる税金の計算方法や、税金がかからない方法について徹底的に解説いたします。
さらに、金をいくらで購入したか分からない時の対処方法についても説明しています。
金の売却を検討されている方や税金の計算方法が分からない方は、ぜひ最後までご覧ください。
ブランド買取販売店「ギャラリーレア」でLA部部長として勤務。業界屈指の激戦区である大阪エリアにおいて10年以上のブランド買取経験を持つ。
日本流通自主管理協会(AACD)の認定査定士として、ブランドに対する確かな知識とお客様に寄り添ったサービスを武器に第一線で活躍している。
目次
金の売却にかかる税金はいくら?
ここからは、金の売却にかかる税金の計算方法について具体的に解説していきましょう。
金の売却にかかる税金と計算方法
サラリーマンなど給与を所得している個人の場合、金の売却による利益は「譲渡所得」に分類されます。
譲渡所得とは資産の譲渡によって得られる臨時所得のひとつで、給与などの他の所得と合算して総合課税の対象となります。
譲渡所得には年間で50万円の特別控除があるため、それ以下の金額であれば課税の対象になりません。
また、保有期間によって譲渡所得の計算方法は異なる点もおさえておきましょう。
まずは金を購入してから5年以内に売却した場合は「短期譲渡所得」とみなされ、以下の計算式が適用されます。
(金の売却益+その他の譲渡益)-特別控除50万円
例えば金の売却益が40万円で、その他に譲渡益がなければ、譲渡所得税を支払う必要がありません。
そして金を購入してから5年以上経過してから売却した場合は「長期譲渡所得」に分類され、以下の計算式が適用されます。
{(金の売却益+その他の譲渡益)-特別控除50万円}×1/2
仮に金の売却益が40万、その他に50万の譲渡益があった場合は、20万円が課税対象額となります。
また、譲渡所得が短期と長期の2種類ある場合は、やや計算方法が複雑です。
はじめに短期譲渡所得から控除額を差し引き、控除額が残っている場合は長期譲渡所得から差し引きます。
計算する順番を間違えると金額が変わってしまうため、十分に注意しましょう。
金の売却で税金がかからない方法
金を売却して利益が出ても、税金を支払う必要がないケースもあります。
例えば給与所得が年間2,000万円以下で、金を売却して得た利益が20万円以下であれば確定申告の必要はありません。
また、金を売却して得た所得は譲渡所得に分類されるため、1年間で50万円の特別控除が適用されます。
複数の金を所持していて、まとめて売却すると譲渡所得が50万円を超えてしまうときは、翌年以降に残りの金を売却するのもおすすめです。
さらに、5年以上保有した金を売却して生まれた所得は長期譲渡所得に分類されるため、申告する税金が少なくなるのもポイント。
金は保有しているだけでは税金がかからないため、可能であれば5年以上保有してから売却すると良いでしょう。
金の取得価格が不明な場合の対処法
金を売却して収入を得たとしても、収入のすべてが利益とみなされる訳ではありません。
通常であれば、金を売却して得た収入から金の購入にかかった費用を引き、残った金額が売却益と判断されます。
ところが、親からの相続などで金の取得価格が不明なときや、購入時の領収書などを紛失してしまったときは、売却価格の95%が利益とみなされてしまいます。
例えば金を200万円で購入し、300万円で売却できたとすると売却益は100万円です。
ところが金を200万円で購入したことが証明できなければ、売却益は285万円と判断されてしまい、課税額が非常に大きくなってしまいます。
そうした事態を避けるために、購入価格が不明な時は金に施された刻印をチェックしてみましょう。
地金には製造番号が記されているため、メーカーに問い合わせると製造日が分かります。
製造日が割り出せれば、製造当時の1gあたりのおおよその金価格を出すことが可能です。
そして1gあたりの金価格と、金の重量をかけ算した金額を出せば、取得価格として認められることがあります。
ただし税務署によっては、領収書や明細書がなければ正当な取得価格と認められないこともあるため、不安な方は税理士や管轄の税務署へ相談すると良いでしょう。
金の売却に税金がかかるのはどんなとき?
売却する金の種類によって、税金の計算方法は異なります。
ここからは、金の売却に税金がかかるケースを具体的に解説していきましょう。
金売却にかかる税金1:アクセサリーの場合
通常であれば、アクセサリーは家具や衣服といった生活用動産(生活に必要な財産)とみなされ、課税対象にはなりません。
ただし、アクセサリーを売却して得た価格が1個あたり(ピアスなら1組あたり)30万円を超える場合は資産と判断されて、課税対象になるので注意してください。
例えば金のネックレスを40万円で購入し、80万円で売れたとしましょう。
この場合、金のネックレスの購入費用に40万円を支払っているため利益は40万円となり、課税の対象となります。
またアクセサリーを購入した価格が分からないと、地金と同様に売却金額の95%が課税対象となるため、領収書や明細書は忘れずに保管しておきましょう。
金売却にかかる税金2:地金の場合
地金を売却して得られた利益は基本的に譲渡所得に分類されるため、年間で50万円以上の譲渡所得がなければ課税対象とはなりません。
ただし、地金を継続的に売却していると営利目的での取引と判断され、雑所得や事業所得の対象になります。
事業として地金の売買をしていない場合は、雑所得に分類されるので、総収入金額から必要経費を除いた金額が課税対象です。
事業として地金を売買している場合は、総収入額から必要経費と青色申告特別控除(最大65万円)を引いた金額が課税対象となります。
また、頻繁に金の売却を行うと、税務署によっては営利目的と判断され、雑所得に分類されてしまうことも。
雑所得に分類されると譲渡所得の特別控除が受けられないケースもありますので、売却の頻度には注意しましょう。
金売却にかかる税金3:積立の場合
純金積立とは、毎月決められた金額や量の純金を積み立てていく投資方法のことです。
純金積立は1,000円前後から始められるため、投資初心者からも人気を集めています。
アクセサリー・地金・金貨などを現物で保有する訳ではないため、自分自身で金を保管する手間や盗難などのリスクもありません。
さらに純金積立は、土地や建物などの固定資産とは異なるため、税金を支払う必要がないのもポイント。
積み立てた金を売却し利益が発生した時のみ、金額に応じて税金の支払い義務が発生します。
また純金積立で購入した金を売却すると、基本的には地金と同じで譲渡所得として課税されます。
金を所有した期間が5年以内であれば短期譲渡所得として扱い、5年以上であれば長期譲渡所得に分類されます。
ただし純金積立は、地金の売却と同様に積み立て期間中に金の売買を繰り返すと営利目的と判断されることがあるので注意が必要です。
営利目的と判断されると雑所得もしくは事業所得となってしまうため、純金積立の取り扱い会社などにあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
金売却時の税金は申告が必要?200万以下なら税務署にばれない?
200万円以上の金を売却すると、買取業者は税務署に「支払調書」を必ず提出します。
支払調書の提出は、利益を意図的に隠し納めなければならない税金を不正に免れるのを防ぐため、2012年1月1日から義務化されました。
支払調書にはマイナンバーをはじめ、氏名・住所・売却した金の種類や個数などが細かく記載されています。
税務署は支払調書により高額な取引があったことを把握しているため、もし申告漏れがあった場合は税務署から指摘を受けます。
金額が大きかったり悪質だと判断されたりする場合には、刑事罰の対象となる可能性もあるので十分に注意しましょう。
また売却金額が200万円以下だった場合でも、金額によっては確定申告をしなければなりません。
例え支払調書を提出していなくても、税務署は銀行口座の動きや個人の財産などを詳細に把握しています。
利益が出ていないのに大きな買い物をしていたり、確定申告の内容に不審な点があったりすれば、税務調査の対象となることも。
「確定申告しなくても税務署にはばれないだろう」と安易に考えず、税金はきちんと納付しましょう。
金売却の税金についてのまとめ
まとめ
- 金の現物の売却で得た利益は、譲渡所得・雑所得・事業所得に分類される
- 金の現物の売却で得た利益は、例え少額でも納税の義務が発生する可能性がある
今回は、金の売却に関する税金について詳しく解説しました。
金を売却して出た利益は、金額や所得の種類に応じて税金を納める必要があります。
納付義務のある税金を申告しそびれていると、税務署から追徴課税がなされるケースも。きちんとした知識を身に着けたうえで、税金の納付し忘れがないように気をつけましょう。
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