軍用時計のルーツを持つブレゲのタイプXX(トゥエンティ)が突然の復活を遂げたのは、1995年のこと。
実用本位の無骨なツールウォッチのエッセンスを残しながらも、現代的なラグジュアリースポーツウォッチとして昇華させたその手腕は見事というほかありません。
登場以来20年以上の歳月を経た現在においても、新しいファンを獲得し続けるロングセラーとなりました。
今回は、そんなブレゲのタイプXX アエロナバルにはじまり、現代の最先端のウォッチメイキング技術が詰め込まれたタイプXXII(トゥエンティトゥ)に連なる、パイロットクロノグラフ・コレクションについてご紹介します。
タイプXX アエロナバル
タイプXXアエロナバルは、1950年代にパイロット用クロノグラフの規格として生まれ、フランス海軍航空隊(アエロナバル)に納品された軍用時計をルーツとしています。
回転ベゼルとフライバック機構、すなわちクロノグラフの作動中にリセットボタンを押すことで、瞬時にリセット、再計測を開始する機構を備えるというものです。
タイプXXアエロナバルは、マットブラックの文字盤とプリントアラビア夜光インデックス、そしてホワイトフレームの夜光針の組み合わせからなります。その顔はまさに往年の軍用時計そのもの。その他、球面サファイアクリスタル風防、伝統のコインエッジケース、そしてデリケートな曲線を描くラグなどはブレゲならではの見事な進化を遂げたのです。
搭載するムーブメントは、現在ブレゲの一部となった旧レマニアによる自動巻きクロノグラフムーブメントです。
タイプXX トランスアトランティック
基本的な仕様をアエロナバルと同じくする兄弟機ですが、文字盤の仕様を変更することで別物といえるほどに異なる印象を与えています。
軍用時計然としたマットブラックの文字盤を特徴とするアエロナバルに対し、トランスアトランティックではツヤのあるブラックの文字盤、そして18Kゴールド製のアワーマーカーを採用。
そのモダンに改められたイメージに合わせて、6時位置にデイト表示が追加されており、実用性を増している点も見逃せません。
タイプXXI トランスアトランティック
タイプXXを進化形として2004年に発表されたタイプXXI(トゥエンティワン)。
基本的なデザインはタイプXXと同じですが、ケースの直径を2㎜拡大して42㎜径としました。ケースの大径化によって、文字盤外周部とベゼルをより立体感のある造形に改めたのです。さらにサテン仕上げを多用、ポリッシュ仕上げの部分とのコントラストを一層際立たせています。
その他、クラシックなイメージを保ちつつも、立体的になったベゼルでより現代的かつラグジュアリーな印象を強めました。その印象は10年以上も前にデザインされたとは思えないものです。
また、搭載するムーブメントもタイプXXと同じですが、15分刻みのインデックスを持ちながら30分積算計となっていた3時位置のインダイヤルを24時間表示の副時針に改め、60分積算計をセンターに配置、クロノグラフの視認性向上と実用性を高めています。
タイプXXII
現代のブレゲによるパイロット・クロノグラフ・コレクションのフラッグシップであるタイプXXII。
シリコン製のエスケープメントを採用することで、従来の28,800振動/時を72,000振動/時という超高振動にまで高め、高精度を実現しました。
一見カラフルに見えるダイヤルデザインは、従来の60秒で1回転に対して30秒で1回転するセンターのクロノグラフ秒針と、これに同軸に配置された60分積算計の判読性を高めるために施された工夫です。これは視認性を重視したマットブラックの文字盤と共に、このモデルの実用性への配慮を表すもの。
高度なメカニズムを内包するケースは44㎜径まで拡大され、厚みも18.05㎜まで増していますが、角度を付けられたラグと安定感のある重量バランスによって、装着感も決して悪くありません。
タイプXXIIは常に革新を繰り返し、時計史を200年早めたといわれる偉大な時計師ブラアン・ルイ・ブレゲの精神が、現代のブレゲにもしっかりと息づいていることの証明にほかなりません。
おわりに
1995年に顧客層の拡大を目指したタイプXXの復活劇は、20年以上に渡る進化を経て、オリジナルモデルに劣らない魅力を現代のコレクションにもたらしました。
全ては偉大なるメゾン、ブレゲの「伝統と革新」という相反するテーマへの一貫した姿勢によるものといえるのではないでしょうか。